親知らずを抜かない人の割合
すべての永久歯が生えそろった後、歯列の一番奥に生えてくる親知らず。正式名称は「第三大臼歯(智歯)」といい、前歯から数えて8番目にあたります。
親知らずというと、生えたら抜くものだというイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
歯科医師に親知らずの抜歯を勧められたものの、抜歯後に頬が大きく腫れたり痛みに苦しんだりした方を目にしたことがあると、不安になってしまうものです。
実は、親知らずは生えてきたら必ず抜かなければいけないわけではありません。
現代人は顎が小さく、親知らずが真っすぐに生えてこられず斜めになってしまうケースも多いです。歯磨きもしにくいため、虫歯になってしまい抜かなくてはいけない場合もありますが、生え方や口の中の状態によっては抜かなくて済む可能性もあります。
親知らずを抜かない人の割合と抜くべきかの判断基準
「親知らずは抜いた方がよいの?」
親知らずが生えてきた場合、真っ先に気になるのが抜歯の必要性です。
虫歯や歯周病、歯冠周囲炎などの原因になってしまうため抜いてしまうケースも多いですが、正常に生えている場合は抜かずに残しておいた方がよいケースも。
ここではまず、親知らずを抜かない人の割合と抜くべきかの判断基準についてご紹介します。
親知らずを抜かない人の割合は?
そもそも親知らずは、上下左右1本ずつの計4本あります。しかしすべての方が生えてくるわけではなく、もともと存在しない方や、4本揃っていない方も。
また、生えてきていなくても歯茎の中に埋まっている場合もあり、歯科医院でレントゲンを撮った際にはじめて気づく方もいます。
親知らずが4本揃っている場合、上下の親知らずを比べると上の親知らずの方が比較的真っすぐに生えてくるケースが多く、約8割の方が正常に生えてきます。
その一方で、下の親知らずについては、歯茎に埋まったままの状態になる方が多く、4人に1人はまったく生えてきません。生えてきた場合でも、斜めになっていたり歯冠部分のみが見えていたりするなど、抜いた方がよいケースは約7~8割にものぼります。
つまり、上の親知らずは約2割、下の親知らずは約7~8割が抜歯になるということです。
さらに、上の親知らずは正常に生えているにもかかわらず、下の親知らずがまったく生えてこないなどのケースでは、生えてきている方の親知らずが成長しすぎて下の歯茎に当たり炎症を起こしてしまうことも。この場合は、正常に生えている親知らずであっても抜いたり削ったりする処置を行います。
これらのことを踏まえると、上下左右4本ある親知らずをすべて抜かずに済む割合は、全体の2割以下と非常に少ないのが実情です。
抜くべきかの判断基準
親知らずは、上下に真っすぐ生えており咬み合わせに問題がなく、歯茎を傷つける心配や虫歯などがなければ抜く必要はありません。
しかし、親知らずが以下のような状態であれば、抜くべきと判断されることもあります。
・斜めに生えていて一つ前の歯に当たってしまう角度で生えている
・将来的に虫歯になるリスクが高い
・歯茎が腫れたことがあった、現在歯茎が腫れている
・完全に生えきっていない
・歯茎や頬を傷つける可能性がある
・含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)の可能性がある
抜歯をした方がよいと判断されたにもかかわらず放置してしまうと、炎症が広がって含歯性嚢胞や顎骨周囲炎などの疾患が生じやすくなります。
顎の骨にまで炎症が広がってしまうと、顔全体が腫れたり口が開きにくくなったりと日常生活に支障が出てしまう可能性も。腫れがひどくなると喉の周辺にまで影響が出て、気道が塞がり呼吸困難になるなど命に関わる危険な状態になりかねません。
歯科医師が抜いた方がよいと判断した場合は、指示に従い抜歯の処置を受けることをおすすめします。
抜歯の難易度を判定する5つのポイント
歯科医院では、親知らずを抜く際にレントゲンやCTの画像、患者さんの病歴や年齢などを参考にして治療計画を立てます。
また、歯の生え方だけでなくさまざまな要素を考慮して抜歯の難易度を見極め、自院での抜歯が可能かどうかなどの判断を行うのが一般的です。
すべてのケースに当てはまるわけではありませんが、ここでは抜歯の難易度を判定する5つのポイントをご紹介します。
歯の生え方
一般的に、親知らずを抜く際にもっとも影響を受けるのが、歯の生え方だといわれています。以下は、歯の生え方による抜歯の難易度の例です。
・真っすぐ生えているタイプ:顎の骨との関係で難易度が高くなるケースもありますが、真っすぐに生えている場合は比較的難易度が低いです。
・斜めに生えているタイプ:親知らずが斜めに生えていると手前の歯にぶつかってしまうケースも多く、下の歯でよく見られます。このケースでは、ぶつかっている部分を削ったり分割したりして取り除いてから、残った根っこの部分を抜くというやり方で抜歯を行うことが多いです。
・完全に横に倒れているタイプ:もっとも難しいのが、完全に横に倒れているタイプです。基本的な抜歯方法は斜めに生えているタイプと同じですが、深い場所に埋まっていることが多いため、難易度が高くなってしまいます。
親知らずが真っすぐに生えている場合でも、咬み合わせに問題があったり虫歯になったりする場合は抜歯を行いますが、難易度は低いので簡単に抜けることがほとんどです。
斜めを向いているタイプや真横を向いているタイプは、歯茎の切開や骨削除が必要となるケースもあるため、難易度が高くなります。
歯根の形
親知らずを含む奥歯の歯根は、2~3本あることがほとんどです。一般的に、歯根が複数に分かれていている場合は抜歯の難易度が高く、根っこの形状によってはさらに難易度がアップします。
以下は、難易度が高い歯根の形の例です。
・歯根が湾曲している
・歯根が肥大している
・歯根が未完成
親知らずでも、単根でアイスクリームのコーンのように円錐型になっているものもあります。しかし、歯根の本数が増えたり曲がったりしているほど抜歯しにくくなります。
中には歯根が未完成というケースもあり、その場合脱臼は簡単にできますが、位置によっては取り出すのに苦戦することも。そのままでは抜けない場合は、歯根を分割してバラバラにしてから取り除くことになります。
歯と骨の癒着の度合い
親知らずに限らず、歯根は年齢が上がるにつれて顎の骨との癒着がみられます。つまり、同じような傾斜や歯根の形でも、20代で抜いてしまうのと年齢を重ねてから抜くのとでは、難易度が変わってくるということです。
また、20代のうちは抜歯後の歯茎や骨、傷口の回復も早くすぐに治りますが、30~40代になると抜歯後の痛みが長引いてしまいます。
50代を超えるまで親知らずを抜いていない場合、虫歯や歯周病だけでなく、全身の健康にまで悪影響を及ぼす可能性も高まります。さらに歯と骨の癒着も強く、抜歯も大変です。
そのため、親知らずが生えてきたらできるだけ早めに歯科医院を受診し、必要であれば若いうちに抜いてしまった方がよいでしょう。
下顎管との近さ
顎の骨の中には、「下顎管」という太い神経や血管の通っている通路があります。
親知らずの位置によっては、下顎管を傷つけてしまう恐れがあり、唇の神経麻痺や舌の感覚鈍磨が生じることもあります。
親知らずの位置によっては、このリスクは避けられないものです。基本的に症状の多くが治癒するため、一生そのままになるわけではありませんが、処置の際に出血が多くなる可能性もあるので、歯科医師とリスクについてよく相談するようにしましょう。
親知らずの位置の深さ
親知らずが歯茎の深い位置にある場合は、処置の際に視野が取りにくく器具も到達しにくいため、抜歯の難易度が高くなります。
また、患者さんによっては、口があまり開かない方もいます。その場合は、器具を口の中に入れにくく抜歯も困難です。歯科医師の経験値や歯科医院の設備によっても治療の精度は変わってきます。
名古屋市西区のみやこデンタルクリニックでは口腔外科、特に親知らずの抜歯を得意としている歯科医師が在籍しているので一度ご相談ください。